テレビに出演する直接のきっかけは三浦知良選手のセリエAへのチャレンジです。国際キリスト教大学 卒業生は今「ジョン・カビラ」
「ねえ、ジョン・カビラが止めるのよ」
先月、飲み会の席で、突然友人が泣きそうな声を上げた。彼女の説明によると、ジョン・カビラがすべてのレギュラー番組を降りて、長い休養に入るという。
「私はいったい、これから誰の声で起きればいいのよ?」
そういって机をどんどんとたたく。彼女はここ何年も、毎朝、ジョン・カビラの濃い叫び声を目覚まし代わりに起きてきたらしい。
「グーーーーッド、モーーーニング、トーーーキョーーー!!」と叫ぶJ-WAVEの朝の番組だ。
そういう僕も、ジョン・カビラの声がない日本のサッカー放送なんて考えられない。
いったい、誰がベンゲル監督にインタビューし、明石屋さんま と掛け合いをするというのだ。
あわてて、ジョン・カビラのFM番組のブログを見に行くと、確かにそこには休養宣言が書いてあった。
この度、私は旅にでることにしました。
10月からジョンカビラはながいお休みをいただくことになりました。
レギュラー番組は全てお休みとなります。
(中略)
実は数年前からこの充電期間を計画していました。
これまでダッシュを続けてきて、ここでしばし立ち止まって深呼吸が必要になりました。
勝手ながら皆さんのご理解をお願いするほかありません。※Good Morning Tokyo スタッフブログより 「ジョン・カビラから全てのリスナーさんへ」2006年9月18日
「旅に出る」
そういえば、ジョン・カビラは、中田英寿の引退宣言の全文を、フジテレビのスポルトで読み上げていた。僕も画面に釘付けになりながら、彼の声で泣き出しそうになっていた。
振り返ってみれば、その7月3日の中田の引退宣言の時に、ジョン・カビラは自分の休養を決めていたわけで、確かにジョン・カビラのその時の声には、いつもと違う思いが乗っていたような気がする。
DJやアナウンサーという喋る職業は、ずっと放電している電池のような職業だ。だから、充電をしたい、と思う彼の気持ちもわかるような気がする。
ジョン・カビラ自身は、喋るのが苦手なほうらしいので、話し続ける自分という別人格がメディアの中で巨大化してしまって、もう一度、本当の自分に返っていく時間がほしかったのかもしれない。
それにしても、仕事を捨てて充電をする、というのは並大抵のことではない。僕だって、インターネットに関わって10年以上が過ぎているわけで、そろそろもう一度勉強しなおしたい、と最近は思っている。しかし、仕事をいったん止めて充電するなどというのは、考えられないことだ。(ちょっと考え始めてはいるのだが)
ジョン・カビラで目を覚ましていた友人によると、ジョン・カビラにとってこれが最初の充電期間ではない、ということだ。
やっぱり1999年にも一度、すべての仕事を止めて休養を設けていたようだ。
さらに言えば、大学時代も国際キリスト教大学をわざわざ退学して、アメリカ西海岸のバークレー大学に1年留学している。もっといえば、小学5年の時にアメリカ カンザスの伯父の農場に、1年間ホームステイをしている。
彼にとって一年間の休養というのは、人生のリズムを刻むための、ポジティブな選択肢だったようだ。
そもそもジョン・カビラが、テレビでサッカーを語りはじめたのは、カズが原因らしい。イタリア セリエAにカズが移籍するのをきっかけに、フジテレビがサッカー番組をはじめ、そこで彼のサッカーキャスターとしてのキャリアがスタートする。
テレビに出演する直接のきっかけは三浦知良選手のセリエAへのチャレンジです。それが僕の中ではシンボリックな形で捉えられていて、それを契機にフジテレビでサッカー番組が始まったっていうのが、最初のチャレンジだった。サッカーをテーマに新しいチャレンジを始めて見ようかと。※国際キリスト教大学 卒業生は今
ああ、きっかけはカズなのか、と思うと、「やっぱりな」という感じもする。
カズに影響を受けた日本のサッカー選手は多いわけだが、選手に限らず、サッカーに関わるあらゆる人が、「カズ」をきっかけに日本サッカーの喜怒哀楽にのめりこんでいったわけで、ジョン・カビラもその一人なのだ。
しかし、それ以上に、ジョン・カビラ自身が筋金入りのサッカーファンでもある。
サッカーはアメリカンスクールの少年のころからやっていて、日本代表の試合も足を運んで応援していたらしい。
(カビラさんの一番好きなチームは?という質問に答えて)僕はメキシコW杯の時の日本代表。木村和志さんのフリーキックを国立競技場で生で観たときは・・・。あれは本当に歴史が動いたと思いましたね。※エルゴラッソ フローランダバディのフットボールモダン 2005年3月25日
僕らが彼の声に幸せを感じたのは、その声の美しさだけが理由ではなかった。
たとえば、ジダンのチャンピオンズ・リーグのボレーシュートの時には、声が出ないほど感激した、とコメントしている。
あれだけ重要なゲームで、ジダンが美しいボレーシュートを描き出した、という価値に、ジョン・カビラ自身が震えるほど感動している。
それが画面から伝わり、僕らも彼と一緒に声を失っていた、というそういう風景だったのだ。
だから、彼がいなくなるのは悲しい。
中田英寿のプレイが見れなくなり、それに続いて、ジョン・カビラの声も聞けなくなってしまうなんて、、、僕らの喪失感は深い。
カズではじまり、中田英寿で終わる。
考えてみれば、日本のサッカーの時代の切り取り方としてはなんとも絶妙だ。
僕らが日本サッカーに輝きを感じたのも、この10年だったと、あとで振り返ることになりそうだ。
日本のサッカーも、放電をしすぎて、ここで一休み、という感じになっている。オシムとともに新しいエネルギーを蓄えるため、試行錯誤を繰り返す期間に入っている。
無意識のうちに、ジョン・カビラはそういう時代のリズムを切り取っていたのだ。
もちろん、ジョン・カビラは引退をしたわけではない。
彼は、また戻ってくる。1年後になるのか、もう少し後なのかはわからない。
果たして彼が戻ってきて、次の10年がどんな時代になるのか、そのことを思うと楽しみでもあり、いささか心配でもある。
ジョン・カビラが声を失うほど美しいゴール。
日本選手が世界の舞台で決める日を、彼も僕も願っている。
コメント
おはようございます。
そして、はじめまして。
AFCの記事を書こうと思い、《カビラ》で検索をしていたところ、素敵な記事を見つけましたので、じっくり読ませて頂きました。
文章がうまいのはもちろんですが、サッカーに対する熱い思いに共感したのでコメントさせて頂きました。
中田の引退は今でも賛否両論です。
同じようにジョン・カビラの休養も賛否両論だと思います。
>ジョン・カビラが声を失うほど美しいゴール。
日本選手が世界の舞台で決める日を、彼も僕も願っている。
全く同感です。みんなで応援しましょう♪
【すぎ】さん、コメントありがとうございます。
>中田の引退は今でも賛否両論です。
>同じようにジョン・カビラの休養も賛否両論だと思います。
そうですね。ちょっと驚きましたです。
でも、じっくり充電する時間を持てるのはうらやましいです。
ジョン・カビラは、きっとあの声で戻ってきてくれると思いますが、、
中田のプレイが見られないのは、本当に悲しいです。
オオウチコム
ジョン・カビラのチャンピオンリーグのラジオ解説は見ているより臨場感があるものでした。この季節になると
スゴーク聴きたくなります。今年はどこが・・・また、ぞくぞくする季節になりました。