ハリー・レドナップの部下になら、なってもいいかな?

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これは信頼のゲームだ。選手を汚い言葉でののしるより、君はこれができるんだ、と言う方が、人から沢山のものが引き出せる
ハリー・レドナップ Sports Magazineのインタビュー 2007年11月29日

今シーズンはハリーレドナップに注目している。ハリー・レドナップは、プレミアリーグのポーツマスの監督で、今のところ比較的上位の順位を保っている。
過去の実績を見ても、降格しそうなチームを立て直したり、プレミアに昇格させたりと、監督をしたチームでは、確かな実績を残し、そしてサポーターに愛されてきた。
とはいっても、今回の話は、ハリーレドナップがサッカー監督としてすごいとか、戦術が先進的だとかそういうことを語ろうとは思っていない。
僕の場合、サッカーを実際にプレイした経験がないので、監督に興味を持つ一歩目は、サッカーから離れた外側から入っていく。
ニュースで関心を持つと、最初に見るのはまずその監督の「顔」だったりする。「顔」を見て、気になったり、好きな顔だったりすると、その監督にひかれていく。
ハリーレドナップの場合、その風貌が「監督らしからぬ」のがきっかけだった。
一言でいえば、「毎朝、出かけるときに家のゴミを出していそうな感じ」なのだ。
監督としてゲーム中のふるまいも、ひょうひょうとしている。
選手に怒る素振りは見たことがないし、自分のチームがゴールを決めたときも、あまり表情が変わらない。(表情が変わらないのは、過去の交通事故の手術が原因、という話を東本さんが書いていた)
また、ベタな比喩だが、自分のヒイキチームに点が入ると喜ぶお父さんに見える。
「おーい母さん点が入ったぞ!ビールもう一本」
そんな感じだ。
普通の監督は、刑事っぽいとか、教授っぽいとか、やけにスマートだとか、恐いぞこいつとか、そういう感じで見ることが多いのだが、ハリー・レドナップの場合は、極めて普通な感じが逆に気になって仕方がなかった。
それから経歴を調べて、最後にサッカーに入っていく。サッカーが最後になるところが、我ながら情けない話なのだが、、、
僕のつたない見方だが、ポーツマスで見せるレドナップのサッカーは、中盤をきっちりつないでくる。
ただ「人もボールもよく動くサッカー」か、というとそんなこともない。
足もとのパスも多く、どちらかというと、しっかりと一人一人がキープしながら前に運んでいく感じだ。
ポーツマスの前線は、アフリカの選手が目立つ。得点源のベンジャミンはジンバブエだ。1.5列目あたりで切れのよいプレイを見せるウタカ(この選手が好きだ)はナイジェリアの選手。ナイジェリアのカヌーが、スーパーサブで出てくる。
前線に身体能力が高い選手が多ければ、ロングボールで得点を取りに行きそうだが、そういうプレイは少ない。
個の責任を重視したサッカーで、選手が自分のエリアとボールをしっかりキープして、次につなげている。泥臭さも少ないが、同時にスペクタクルも足りない感じではある。
だからなのか、このチームは、本当に強いチーム、つまり4強のチームには、勝ち切れない印象がある。上位の4強を破れば、チャンピオンズリーグも狙えそうだが、ジャイアントキリングの匂いはしない。
ここまで書いて、なんだかちっともほめていない自分に気がつくわけだが、ハリー・レドナップが指揮するポーツマスを見ているのは、居心地がよい。
変なたとえだが、この人の下でだったら働いてもいいかな、とそんな感じでみている。
ハリーレドナップの過去のインタビューをいくつか読んだが、戦術やチームコンセプトについてはまったく語らない人だ。語っているのは、もっぱら選手にどう接するか。

私はものを投げつけて怒るタイプの監督ではない。選手に不満があるときに、怒鳴りつけて、君はこれが出来ないと言う事が正解だと思わない。これは信頼のゲームだ。選手を汚い言葉でののしるより、君はこれができるんだ、と言う方が、人から沢山のものが引き出せる
ハリー・レドナップ Sports Magazineのインタビュー 2007年11月29日

私は軍曹タイプではない。選手たちは毎日怒鳴られるために来るわけじゃない。私は彼らと笑いあい冗談を言っている。選手たちが、自分は重要なんだと思えるようにしている。彼らを力づけ、信頼する事が大切だ。私は、誰かにどんな悪いかをいうより、どんなによいかを教える方がよいと信じている。
イングランド監督協会 インタビュー 2006年9月24日

たとえば、カペロ監督なら、確かに結果を残すかもしれない。しかし、どうもカペロ社長の会社には勤めたくない。売上が上がりそうだが、功績は社長が全部持っていきそうだ。社員はちっとも幸せにならない感じがする。
ファーガソンの下はさすがに厳しそうだ。ベニテスの下だと、なんだか理屈っぽそうだし、アラダイスの下になると、いつ怒鳴られるかびくびくものだ。
モウリーニョの下というのは、上昇志向があればよいが、見放されると地に落とされそうだ。落とされたあとで、いつの間にか社長がいなくなっていそうで、それも困る。
ハリー・レドナップはイングランド代表監督の有力候補だったようだが、残念ながら今回レドナップ社長の体制はできなかった。
まだ確定事項でないので、軽く触れるが、選手の移籍に絡むお金の問題で、警察から事情聴取を受けたようだ。そんな点も障害になったのかもしれない。
あまりほめてはいないが、サッカーも決して悪くはない、と僕は思う。
相手の長所を消すサッカーが多い中、しっかりと自分たちのサッカーを追及している。高いレベルの個がリズムを持つと、目の覚めるような場面が展開され、調子に乗ると、手がつけられない。
今のイングランド代表の面々を思い浮かべたとき、カペロ社長のもとでプレイするより、レドナップ社長のもと、自信を持って伸び伸びとプレイするほうが、結果はともかく、幸せだったような気もしてくる。

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